人生で初めての胃部エックス線検査を終えた私は、開放感に浸りながら帰路についていました。検査中に飲んだあの重苦しい白い液体が、まさか数時間後に自宅のトイレで悪夢を見せることになるとは、その時の私は露ほども思っていませんでした。帰宅してしばらくすると、下剤の効果で急激な便意が襲ってきました。トイレに駆け込み、用を足した後に何気なくレバーを回した瞬間、私の背筋に冷たいものが走りました。いつものように渦を巻いて消えていくはずの水が、便器の底で白く光る不気味な塊を前にして、まるで拒絶されたかのように立ち止まったのです。二回、三回と執拗にレバーを操作しましたが、結果は同じでした。それどころか、流すたびに水位は不気味に上昇し、あと数センチで縁から溢れ出しそうなところで辛うじて止まりました。私は絶望的な気分で便器を見つめました。そこにあるのは、もはや排泄物ではなく、誰かが悪意を持って流し込んだ建築用セメントのようでした。パニックになりかけた私は、震える手でスマートフォンを手に取り「バリウム トイレ 流れない」と検索しました。そこには「熱湯は厳禁」「無理に流すと故障の原因」という恐ろしい警告が並んでいました。私は藁をも掴む思いで、台所に走り食器用洗剤を手に取りました。ネットの記事に従い、洗剤を便器に回し入れ、お風呂場で沸かした四十度強のぬるま湯をバケツに汲みました。一歩間違えれば大惨事になるという緊張感の中、私は少しずつ、祈るような気持ちでぬるま湯を注ぎ込みました。そのまま一時間、私はトイレのドアの前で時計の針を眺めて過ごしました。もし直らなかったら、明日会社を休んで業者を呼ばなければならないのか。近所の人にバリウムでトイレを詰まらせたことがバレるのではないか。そんな不安が頭をよぎりました。一時間が経過し、おそるおそる中を覗くと、洗剤の泡の中で白い塊がわずかに角を落とし、柔らかくなっているように見えました。私は勇気を振り絞り、バケツに残ったぬるま湯を、少し高い位置から排水口めがけて一気に流し込みました。その瞬間「ゴボゴボッ!」という、これまでの人生で聞いた中で最も美しい音が響き渡り、白い悪魔は排水管の向こう側へと姿を消しました。私はその場にへたり込み、深く溜息をつきました。健康を守るための検査が、これほどまでに生活の基盤を脅かすものだとは思いもしませんでした。これ以来、私はバリウム検査の前には必ずトイレットペーパーを敷き詰めるなどの予防策を忘れないよう、カレンダーに赤字で書き込んでいます。