洗濯機の水が出ないというトラブルで、蛇口やホース、フィルターなど、基本的な箇所を全てチェックしても異常が見当たらない。そんな時、いよいよ疑われるのが、洗濯機本体の内部にある、給水を司る心臓部、「給水弁(ソレノイドバルブ)」の故障です。この部品は、私たちの目には見えない場所で、洗濯のたびに正確な水の供給をコントロールしている、極めて重要なパーツです。給水弁とは、電気の力で水の通り道を開閉する、電磁式のバルブのことです。洗濯機のスタートボタンを押すと、制御基板から電気信号が送られ、給水弁内部の電磁石が作動して弁が開き、水が洗濯槽へと供給されます。そして、設定された水位に達すると、水位センサーからの信号を受けて通電が切れ、弁が閉じて給水が止まる、という仕組みになっています。この給水弁が故障すると、当然ながら水は出てこなくなります。故障の主な原因は、長年の使用による「経年劣化」です。一般的に、洗濯機の寿命は7年から10年と言われていますが、給水弁も同様に、数万回もの開閉動作を繰り返すうちに、内部のパッキンが摩耗したり、弁を動かすプランジャーが固着したり、あるいは電磁石自体が断線してしまったりします。給水弁の故障を知らせる「寿命のサイン」には、いくつか特徴的な症状があります。まず、スタートボタンを押した後に、「ジー」とか「ブーン」といった、うなるような異音がするにもかかわらず、水が全く出てこない、あるいはチョロチョロとしか出ない場合。これは、電磁石は作動しようとしているものの、弁が物理的に開かなくなっている可能性が高いです。また、逆に、洗濯をしていないのに、常に洗濯槽に水が少しずつ溜まっているという場合は、弁が完全に閉じなくなっている証拠であり、これも給水弁の故障です。給水弁は、洗濯機の内部、しかも給水ホースの接続口のすぐ裏側に組み込まれているため、その交換作業は、専門的な知識と技術を要します。感電や水漏れのリスクも高く、DIYでの修理は極めて困難です。もし、これらの症状が見られたら、それは洗濯機が専門家による診断を必要としているサインです。修理費用は、部品代と作業料を合わせて15,000円から25,000円程度が相場ですが、洗濯機の使用年数によっては、修理ではなく、新しい製品への買い替えを検討する良い機会かもしれません。