私たちは自分たちの住居が社会的なインフラの一部であることを忘れがちですが、キッチンの排水溝やトイレの便器は、すべて公共の下水道システムへと繋がっています。健康診断の後に排泄されたバリウムが流れない状況を放置することは、単に自室のトイレを壊すだけでなく、建物全体や地域の環境に対する一種の「不法投棄」に近い状態を招くという視点を持つべきです。バリウムは自然界で容易に分解される物質ではなく、その重さと溶けにくさは、下水道施設のフィルターやポンプにとっても大きな負担となります。もし、個人が「自分の家さえ流れてしまえばいい」と考えて、半分固まりかけたバリウムを無理やり大量の水で押し流したり、そのまま放置して夜中にこっそり流したりした場合、そのバリウムは下流の細い配管で再び沈殿し、他の世帯の排水を止める原因になるかもしれません。特にマンションやアパートなどの集合住宅においては、一住戸でのバリウム放置が、建物全体の立て管の閉塞という大事故を招く事例が報告されています。この場合、原因を特定するための調査が行われ、もし特定の住戸の放置が原因であると判明すれば、建物全体の高圧洗浄費用や他住民への謝罪、賠償など、計り知れない社会的な責任を負うことになります。放置という無責任な行為が、住環境の質を低下させ、近隣トラブルの火種となるのです。また、環境的な側面から見れば、バリウムという金属化合物が不適切に処理されることは、水質汚染のリスクを僅かながらも増大させます。排水溝からバリウムを流す際には、それがどのような経路を辿り、どこで止まる可能性があるのかを想像する力が必要です。流れないバリウムを放置せず、その場で適切に処理し、水流を確保することは、現代社会に住む市民としてのマナーであり、共同生活における責任でもあります。健康を守るための検査という正当な行為が、社会的な「重罪」とも言える迷惑行為に転じないためには、バリウムという特殊な廃棄物に対して、私たちはより謙虚で丁寧な姿勢で向き合わなければなりません。トイレのレバーを一回回して終わるのではなく、完全に配管の先までバリウムを送り届けたという確信が持てるまで、責任を持って見届けることが、文明社会における排泄のあり方と言えるでしょう。
排水溝のバリウム放置が引き起こす重罪